シャーロットのおくりもの/Charlotte`s Web監督:Gary Winick出演:Dakota Fanning 他
【注意】
この記事にはネタバレ表現が含まれています。
鑑賞予定の方の閲覧はご注意ください。落ちこぼれのブタ、ウィルバーと、蜘蛛のシャーロットの友情が、小さな田舎町に巻き起こす小さな奇跡を描いた、児童向け名作古典文学の映画化作品。
ストーリーに関しては言わずもがな、大人から子供まで楽しめる、心温まる動物たちと人間の交流が織り成す物語だ。この手の物語で失敗している映画は観たことがないという定石通り、誰の心にも素直に伝わってくる、良い作品に仕上がっている。というか、こういう映画に素直に感動出来ないようになったら人間おしまいだな、とも思ったりもする時点でちょっとおしまいの気配を自分に感じてしまうのは、些か考え過ぎか。
最近ゾンビだのなんだのとオタクっちい映画ばかり観ていたせいで、こういった誰にでも楽しめる映画を改めて観ると、とても清々しい気分になる。勿論子供には大いに見せてあげて欲しいし、大人でも何か自分の原点を思い出させてくれるような、懐かしい感覚を呼び起こすものがある。これも一重に原作のもつ物語としての素晴らしさの賜物だろう。
というわけで、今回の映画化にあたっての制作側の一番の貢献と、大人として見所のひとつに、そのVFX技術の秀逸さがある。
PixarやDreamworks製のフル3DCGアニメの、その年々明らかに研ぎ澄まされてゆくCG技術のクオリティにはもう見慣れてきたところだが、この映画はあくまで実写である。まずそこが凄い。フル3Dアニメの場合、どんなに美麗なCGであっても、あくまでそれは「アニメ」であり、登場人物は「キャラクター」として個性を強調したビジュアライズ化されており、例えば毛の質感が物凄く優れていたとしても、それは架空の世界のなかでの描写の秀逸さでしかない。ところが、この映画はベースがあくまで実写なため、まるで本物(というか本物とCGの合成が主)のブタ、ネズミ、馬、牛、ガチョウ、カラスが台詞を喋り演技をするのである。その自然なこと。まるで本当に動物が人語を話せるかのように錯覚してしまいそうになるほどだ。
撮影はなるべく本物の動物を使用し、例えば納屋のなかで動物が一堂に会しているような、実際撮影するのは不可能、もしくは膨大な時間がかかるようなショットは、それぞれの動物ごとに撮影し、コンポジット(合成)等の処理をしているそうだ。しかし映画中の大半の部分は動物たちの会話で構成されており、つまり殆どのショットでコンポジット処理を行っていることになる。これは通常の映画と比べても膨大な量になるだろう。また、動物に演技をさせるのは人間にさせるより比べ物にならない労力が必要なのは明確であり、トレーナーやスタッフの苦労は計り知れない。その困難極まる撮影に、敢えてフルCGという手法を選択しなかった制作側の意図には多大なる評価とともにとても好感を覚える。そこがこの映画にこそ欠かせない「リアリティ」というものに一役かっていることは間違いないからである。
この映画に欠かせない登場人物(?)の蜘蛛のシャーロットは、ネズミのテンプルトンとともに唯一全てのショットをフルCGでつくられたキャラクターだが、シャーロットのみリアルな蜘蛛の造形ではなく、キャラクター性をつけられている。その点が、この映画のなかで浮いてしまわないか少し心配だったのだが、いざ観てみると全く違和感を感じなかった。リアルな蜘蛛を登場させたら、個性どころかアップで耐えられないお客さんも出てしまうかもしれないし、重要なキャラクターだけに表情は欠かせない。そこを上手く折り合いをつけたなあと感じた。蜘蛛らしさを失わず、かつ表情豊かに優しく賢いシャーロットというキャラクターをよく描いている。また、ジュリア・ロバーツの声もとてもマッチしていて、良い。
シャーロットが蜘蛛の巣を紡いでゆく映像も圧巻で、普段顔にまとわりついてイライラさせられる蜘蛛の巣を、とても同じものと思えないほど美しく描いている。
ネズミのテンプルトン役のスティーブ・ブシェミほか、豪華な声優陣も必見だ。もちろん主演のダコタ・ファニングはとっても可愛い。思ったより全然登場シーンは少ないけれど・・・。
近年の映画はCG技術の躍進でリアリティが大幅に増し、少し前では映像化不可能と言われそうなこういった映画を容易に(決して容易な訳ではないだろうが・・・)映像化してしまう。それもとてもリアルに。
そこで、果たしてこういった「リアルな、架空のものがたり」を観て育った子供は何を考えているのだろう、と少し思う。自分が幼いときは、映画は明らかにつくりものめいていたし、実現不可能な映像も今よりずっと多くあった。それが逆に想像力を掻き立てたものだ。だが、ここまでリアルなものをまざまざと見せ付けられることが普通、の環境で育っていったら、想像が全て具現化した映像で賄えてしまい、逆に想像し創造する力がなくなってしまうことも有り得ないだろうか。そんなことはただの杞憂に過ぎず、「わかってるよ、あんなのCGだろ」とか生意気なことを言うぐらいの子供の逞しさを見せ付けて欲しいものである。
2007/07/08
CINEMA ・
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