■サスペリア/SUSPIRIA/1976/監督:ダリオ・アルジェントちなみに原題「SUSPIRIA」はイタリア語でたぶん嘆息、溜息の意。(
参考サイト)
間違いなく、今まで観た映画のなかのベスト5に入る映画。
そういうわけで、今回は普段に増して偏見(偏愛)が入り乱れるかと思いますがご容赦を。
ちなみに「ホラー映画」ベスト5ではないです。「映画」として、好きなんだからしょうがない。
で、とうとう買ってしまいました
サスペリアDVD-BOX。触ると何やら浮き出る特製BOX仕様。当時のよもやま話やら満載のブックレットつき。特典映像も合計約3時間収録と、76年度制作の大分前の映画にしては豊富で嬉しい限り。ファンなら押さえねばならなくなって居てもたってもいられなくなるところでしょう、多分。
で、通算4回目ぐらい、久々にまた観た。
ストーリーは簡単に言うと謎解き+オカルト。肝心の謎解きのところを殆ど覚えていなかったので、初めて観たときのような感覚で観れた。しかし実はこの映画に於いてストーリーはあまり重要じゃない。と言うと、入念なリサーチを重ねて脚本を執筆したアルジェント夫妻に失礼かも知れないが、今観ると色褪せて感じてしまうのはいたしかたがない。冒頭〜最初の殺害シーンの強烈さから比べると、どうしても後半の謎解きはチープで、さらにストーリー上のオチの付け方もあっけなく感じてしまう。どうしても冒頭を上回る盛り上がりを見せないのだ。また、オカルトと謎解きという組み合わせが、どうにもマッチしていない。超常現象は論理的なものを超越しているのに、そこを論理的に語ろうとしているのでどうしても無理があるのだ。
だが、この映画で特筆すべきはストーリーではない。その余りある映像美だ。そして音楽。一度聴いたらしばらくは耳について離れなくなる、ゴブリンの印象的な音楽と融合した極彩色の映像は、音と映像が見事に絡まり合って、このうえない「映像を観ることへの快感」へといざなう。だが、映像を視聴する快楽それだけならPVやらなんやらでこと足りる。そこに明らかにストーリーがあり、登場人物というキャラクターがおり、チープだろうと理屈が合ってなかろうと起承転結のついた流れにのって、架空の「現実」が確固として存在しているのだ。99分ものあいだ!これぞまさに映画。映画でしか成し得ない快感。明らかに有り得ない赤、黄、青の照明が煌々と照らされていようが、その世界はその時そこにリアルに存在している。それを見事に成し遂げたこの映画はやっぱり映画以外の何ものでもなく、音、美術、ストーリー、キャスト、照明、どれが欠けてももう成立しなくなってしまうのだ。「観る快感」。この言葉がこの映画に最高に相応しい。
初めてこの映画を観たとき、一番鮮烈だったのは血の色だった。リアルには程遠い、赤、としか言いようのないどろっとした赤。それまで古い映画でさんざリアルじゃない血の色を観てげんなりしていたが、この映画の血の色はリアリティを放棄した大きな代償としての「美」を感じた。この映画の世界では血の色はこの色以外に有り得ないし、この色でなくてはならないんだと痛烈に感じた。血の色をこんなに美しいと思える映画が他にあるだろうか。
余談だが、アルジェントが関わったロメロの「ゾンビ」を観たとき、血の色がよく似ていた。「ゾンビ」自体は大好きな映画だがやはり腐敗した死体にこの赤は少し強すぎた。若い女性の綺麗な白い肌にこの血、あってこその美なのだと思う。あ、ちょっと変態っぽいな。
アルジェントは本当に綺麗な映像を撮る。血だけでなく、人間の肌の質感がこのうえなくいい。当時入手困難だったテクニカラーのフィルムをわざわざ中国から取り寄せて撮ったそうだが、そのこだわりが反映されているかはわからないが、パッキリと強いコントラストで映し出される映像は一枚一枚を写真にしても遜色がないだろう。モノクロだが鈴木清順の「殺しの烙印」を少し彷彿とさせるのは照明の陰影が強いせいか。以前観たきりだが「サスペリアPART2/紅い深淵」ではこの「サスペリア」のようなどぎつい色味の照明をあまり使っていないぶん、更にそう感じた気がする。
また、登場する建築、内装、インテリアが他に類を見ない。レトロ・モダンというのかアール・デコというのか詳しくないのでよくわからないが、独特だ。個人的に好きなのは盲目のピアニストが殺されるシーンで、暗くだだっ広い広場に浮かび上がる巨大な神殿のような建築物(ミュンヘン国立博物館らしい)と、その中心でぽつんと佇む盲導犬を連れたピアニスト。それ以外は全て闇に包まれており、建築物の異様な存在感と不安感がないまぜになって、美しさと恐怖とがいっしょくたになって迫ってくる。また、劇中の舞台になるバレエ学校の外観と内装(ここはプール以外はセットだそう)も必見。
画にこだわると言えば真っ先にピーター・グリーナウェイが思い浮かぶが、グリーナウェイが実に構造的、計算的に画づくりをしているならば、アルジェントはいささか感覚的なのだろう。グリーナウェイがこれでもかとつくり込みまくって、完璧なまでに完璧なものだけを厳選しスクリーンに映し出しているのは自明の理だし、そこにはある種潔い開き直りまでもを感じさせ、それはそれで気持ちがいい。だが、アルジェントはもう少し映画的に、置いてみたけどそれはあくまで背景、メインディッシュは映画自体にあると考えて撮っているように感じる。さんざん美だ美だと騒いできたが、やはり敏腕プロデューサーとしての顔もあるだけに、映画としてのエンタメ性を一番に考えているのだろう。
結局、収集がつかなくなってきたので(笑)まとめると、自分がこの映画の何処がそんなに好きなのか。
それは、「映画」として成立されていてかつ、「映画」として成立させようとしているアルジェントの想いが伝わってくるから。
どんなに「鮮烈な映像」とか「強烈な色彩」とか「印象的な音楽」とかもてはやされていても。偏っていない。偏らせたくない。その危ういけれど絶妙なバランス感覚が、観ていて最高にキモチイイのだ。それだけだ。
2007/02/23
CINEMA ・
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